Journal of UOEH
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臭化メチルの神経毒性-神経病理学的評価-
-予備的実験-
古田 晶子百道 敏久大西 晃生保利 一田中 勇武
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1993 年 15 巻 1 号 p. 21-27

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抄録
臭化メチルはヒトに中枢および末梢神経障害を惹起する. 現在までの臭化メチル中毒動物の神経病理学的な研究にもかかわらず, 臭化メチル中毒による多彩なヒトの神経障害は実験動物で十分に再現されていない. 本研究では, 1日6時間, 週3日, 3-8週間にわたり, 500または290ppmの臭化メチルの繰り返し曝露を受けたラットの神経系病変を組織形態学的に系統的に検索し, 未だ実験動物で再現されていない病変を明らかにすることを目的とした. その結果, 10-18日間の500ppmの臭化メチル曝露によってのみ, ヒトの脊髄後索病変に対応すると判断される頚髄薄束有髄線維の軸索変性およびヒトの大脳病変に対応すると判断される, 1)尾状核-被殻の壊死病変, 2)尾状核-被殻, 視床および帯状皮質の神経細胞の萎縮およびニューロピルの染色性の低下が認められた. この実験により初めて明らかになった脊髄後索病変の作成は, 繰り返し曝露が可能でかつ500ppm以上の濃度の臭化メチルの曝露によって達成されると推定される.
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© 1993 産業医科大学
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