抄録
平成3年から4年にかけて2事業所で行った職域内大腸癌検診の成績を検討した. 2, 440名を対象にスクリーニングとして免疫学的便潜血反応1日法を用いた. 実施者数は1, 795名で, 潜血反応陽性者は71名(陽性率4.0%)で, その中の52名(73.2%)が全大腸内視鏡検査や注腸造影などの精密検査を受けた. 33名に何らかの大腸病変があり, そのうち5例に大腸癌を発見した(有癌率0.28%). 1例は根治手術可能な進行癌で, 4例は腺腫内癌で内視鏡的ポリペクトミーにて切除した. 21例に大腸腺腫があり, 11例ではポリペクトミーを施行し, 10例は経過観察とした. その他1例に神経腫, 3例に痔疾患, 2例に憩室, 1例に線状潰瘍がみられた. 職域内大腸癌検診は壮年期の人々を対象とする重要な社会的意義をもち, 管理指導により受診率や精密検査受診率をさらに向上させ, 大腸癌の早期発見率を向上させることが期待できる.