抄録
感覚障害を示さない40(男13, 女27)名を対象とし, Vibratron Ⅱ, TM-31AおよびSMV-5の3種類の振動覚弁別閾値測定器を用いて, 3-4日目毎に3回繰り返し測定を行い, 1)各測定器で得られた測定値の信頼度, 2)利き手の示指掌側末節と橈骨茎状突起における測定値と年齢との相関関係, 3)各部位において2種類の測定器で得られた各閾値の相関関係を評価することを目的とした. 40名で3回繰り返し測定して得られた級内相関係数が, 示指におけるVibratron ⅡおよびSMV-5による評価では, それぞれ0.77および0.88であった. 同様に橈骨におけるTM-31AおよびSMV-5による評価では, 級内相関係数がそれぞれ0.62および0.84であった. 40歳以下の若年者20名と41歳以上の中・高年者20名の間において, 各機器による各部位別の測定値の級内相関係数はほぼ同様の値を示したが, いずれの値についても若年者では中・高年者よりも低値を示した. 各機器による各部位の測定値と年齢との間に正の相関関係が得られた. 示指におけるVibratron ⅡおよびSMV-5の閾値および橈骨におけるTM-31AおよびSMV-5の閾値の間に, 正の相関関係が認められた. 各機器とも, 振動覚障害の診断・評価, 感覚障害を示す患者の追跡調査と治療効果の判定および産業・環境医学領域における末梢神経障害のスクリーニングと診断に応用可能と判断される. しかしながら, TM-31Aは3種類の機器のうちで信頼度が最も低く, 測定値と年齢との関係の相関係数も最低値を示した.