抄録
香りに対する乳児の反応を脳波を用いて評価した. 対象は月齢3-4の正常成熟混合栄養児11例で, 自然睡眠下で母乳とオレンジの香りを呈示し, それによる脳波変化を高速フーリエ変換を用いて分析した. 分析には睡眠2期と徐波睡眠期に香りを呈示した際のデータを用いた. Paired-t-testの結果, 母乳では左右前頭部と中心部の δ, θ 帯域で有意な振幅値(絶対パワー値の平方根)の減少が認められた. 一方, オレンジでは中心部と右頭頂部の δ 帯域で有意な振幅値の増加が観察された. この両香りによる脳波変化の相違は2要因分散分析の結果においても明らかであった. このように乳児においても香りの違いによって脳波の反応に差がみられるということは, 香りに対する乳児の反応を評価するのに, 脳波が有効な手段であることを示唆する.