抄録
我々の考案したラット肺再灌流モデルを用いて, 保存肺の肺循環およびガス交換能の測定を行い, Coenzyme Q10(CoQ10)の保護効果について検討した. 実験1では, CoQ10を心肺ブロックを摘出時の灌流液20 mlに0.08 mg, 0.4 mg, 4 mg加えた. 実験2では, CoQ10を心肺ブロック摘出1時間前に3 mg/kg, 6 mg/kg, 12 mg/kg静脈内投与した. 10℃6時間保存後, 希釈血液を灌流液とする再灌流回路に接続し30分間灌流を施行した. その結果, CoQ10を心肺ブロック摘出時の灌流液に0.08 mg, 0.4 mg投与した群では, control群と, とくに差異を認めず, 4 mg投与した群では, むしろ保存状態は劣悪であった. 一方, 心肺ブロック摘出の1時間前に6 mg/kg静脈内投与した群ではcontrol群に対して肺動脈圧, 気道内圧, 酸素化能, 湿乾重量比について有意に良好な結果を示した. 以上より, 適切なCoQ10投与は, 肺保存に対し良い効果を与え得る可能性が考えられた.