1994 年 16 巻 4 号 p. 263-275
在郷軍人病の原因菌であるL. pneumophilaは細菌補食性原虫内で増殖しつつ,水系環境中に生息している. これまで10数種の原虫内で本菌が増殖することが報告されているが線毛虫T. thermophila中で本菌が増殖できるかどうかは報告がなく,今回T. thermophila細胞内で本菌が増殖できるかどうか調べた. 本菌をPYG培地中でT. thermophilaに補食させ,補食されなかった細菌を遠心分離により除いた. 細菌を補食したT. thermophilaをPYG培地で温度を変えて培養し,経時的にT. thermophila中で増殖したL. pneumophilaの菌数をBCYE培地を用いてカウントした. その結果,1)本菌はT. thermophilaの食胞中で増殖した. 2)増殖能は温度に影響され,28℃,32℃では増殖能が悪く35℃でよく増殖した. 3)補食された菌数が原虫1個当たり約30の場合は35℃で増殖したが,約10の場合は35℃で殺菌された. これらの結果より,自然界中でも本菌はT. thermophilaに補食され,食胞内で増殖可能であるが,温度や補食された時の菌数など細胞内増殖の条件は限られているであろうことが示唆された.