1989年現在, 日本の全労働者人口約4, 900万人の内, 中小企業に従事する人口は2, 900万人で58.3%を占め, この割合はOECD加盟諸国の平均40%を, 大きく上回る. 一方, 日本における産業保健に関わる制度は, 産業医, 衛生管理者などの産業保健従事者の契約・雇用を始めとして, 事業所の規模に基づき規定されている. 経済上および人材上の問題から, こうした小規模事業所に従事する集団は, 大規模事業所に従事する集団に比べ, 相対的に産業保健サービスを受けにくい. 労働省および関連機関は, 対策として中小企業に対し産業保健サービス実施に際しての助成制度を設けている. また, 地域産業保健センターの設置による具体的サービスの推進が試みられている. 日本における保険, 産業保健サービスならびに中小企業における問題を整理し, 助成制度の概要, 意義および運用について概説した.