抄録
クロムメッキ作業従事者の健康影響についての調査はまだ十分になされていない.我々はクロムメッキ作業者の死因パターンの特徴を調べるために, 東京都にあるメッキ工場の従業員1,193名を対象に16年間の追跡調査を行った.同集団をクロムメッキ作業者群(623名)と非クロムメッキ作業者群(567名)に分け, 1976年10月から1992年12月まで追跡した.標準化死亡比(SMR)およびその95%信頼限界(95%CI)を統計学的評価に用いた.クロムメッキ作業従事者における慢性肝炎および肝硬変の死亡リスクについて統計学的に有意な上昇(SMR 2.34; 95%CI 1.17-4.19)と, 肺がんのリスクの上昇傾向(SMR 1.18; 95%CI 0.99-3.04)が示された.非クロムメッキ作業従事者においては, 死亡リスクに関する有意なリスクの上昇を認めたものは無かった.我々は, 各疾患における死亡数が少ないことから, 今後もさらなる追跡調査が必要であると結論した.