抄録
本研究では本学卒業の10名の専属産業医の経験をもとに, 産業医として勤務するために必要な知識・技能と, その卒前・卒後教育の課題を意思決定理論の一手法であるAHPを用いて明らかにすることを試みた.まず, 産業医の業務内容および必要とされる知識・技能をKJ法にて要約し, それをもとに「卒前一般教育」, 「卒前医学教育」, 「産業医学基本講座」, 「卒後臨床研修」, 「On the Job Training」の各々の相対的重要度についてAHPにより分析した.その結果, 産業医として必要とする知識・技能としては「社会医学」, 「情報科学」, 「臨床医学」がこの順で重視されており, また, 業務内容としては「医学的管理業務(対人)」と「衛生学的管理業務(作業環境)」が重視されていた.そして, それらを学ぶ場としては「On the Job Training」, 「産業医学基本講座」, 「卒後臨床研修」の3つがこの順で重視されていた.