著者のこれまでのメンタルワークロードに関する研究結果に基づき, 作業負荷要因以外の, ワークロード評価指標に影響する要因について考察した. まず, 主観的ワークロード評価指標の例として, NASA-TLXによる実験例を取り上げ, 主観指標が直前の作業負荷に影響を受けることなどを示した. 次に, 生理指標として心拍変動性についての実験例を紹介し, 作業中に被験者が呼吸リズムを一定に保てなかった例や, 発汗反応はワークロードに感度が高いが, 低反応者もいることなどを示した. さらに, 生理反応の作業特異性とタイプAなどの個人特性に関する結果を示し, 自律神経系の交感・副交感神経の共働作用について引用し, 一見, 矛盾して見える生理指標間の反応関係の解釈を試みた. 最後に, 反応は全員異なることもある(「十人十色」)ことを述べ, 個人差に対応したデータ処理の戦略の必要性を強調した.