Journal of UOEH
Online ISSN : 2187-2864
Print ISSN : 0387-821X
ISSN-L : 0387-821X
カドミウム誘発貧血症ラットにおける脾腫の病理学的研究
濱田 哲夫谷本 昭英有馬 信之井出 良浩笹栗 毅和島尻 正平村田 義隆王 克鏞笹栗 靖之
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 20 巻 1 号 p. 11-19

詳細
抄録
貧血はカドミウム(Cd)中毒における最早期徴候の一つとしてよく知られている. 我々は貧血に伴って認められる脾腫と変形赤血球(PC)増多症に注目し, Cd誘発貧血症の発症機構について検討を加えた. ラットでは脾腫はCdの慢性投与により, 1週間後には明らかとなり, その重量は8週間では対照の約2倍となった. 腫大脾の電子顕微鏡的検索ではハインツ小体(HB)の形成と著明なPCが目立った. HBの形成は赤血球の脾内溶血を, 次いでPC増多症を促進することが知られている. 一方, 赤血球では膜の脂質過酸化がPCの, ヘモグロビンの酸化的変性がHBの原因とされている. これらのことから, Cdは初めに赤血球膜異常ついでPC増多症をひき起こし, この異常赤血球が脾で処理されるため脾腫が招来されることが示された. このように赤血球異常-脾内溶血-脾腫の連関は, Cd誘発貧血発症のメカニズムの一つとして重要である.
著者関連情報
© 1998 産業医科大学
前の記事 次の記事
feedback
Top