抄録
尿路感染症においては細菌の尿路粘膜に対する付着機構とそれに伴う炎症反応が尿路感染症の本態となる. 従って, この両面からのアプローチが必要であり, この方面における研究が進んできた. 病原因子としての付着機構については, 細菌線毛が重要であり, 特に, 大腸菌の線毛の研究が進み, 遺伝子支配や相変異(Phase variation)についての機構がはっきりしつつある. また, 宿主反応としてはサイトカインを含んだ, 尿路の炎症反応が尿路感染症の病態を決定する. 特に, 腎盂腎炎に伴う腎瘢痕や逆流性腎症などは炎症反応の結果であり, 抗菌薬療法のみでなく, 腎実質障害の予防が治療上の問題点である. このような領域の最近の進歩について概説する.