Journal of UOEH
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ベンゼン毒性に及ぼすエタノール投与の血液,肝薬物代謝酵素に対する影響
山村 香織加藤 貴彦菊池 亮吉川 正博嵐谷 奎一
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1999 年 21 巻 1 号 p. 29-35

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抄録
ベンゼン単独投与の生体に及ぼす影響はよく研究されているが, エタノールとの併用投与の報告は少ない. 我々は, エタノールを5週間飲水摂取(20%エタノール)させ, その後同条件下において, ベンゼン(0.26 g/kg, 1/4 LD50量)を週5日間, 3週間投与後, 体重, 臓器重量, 末梢血液, 肝薬物代謝酵素系に対する影響を検討した. 対照群に対し, ベンゼン投与群の肝臓重量は有意に増加し, 脾臓重量は有意に減少した. 末梢血の白血球数はベンゼン投与群およびエタノール+ベンゼン投与群で対照群と比較し有意に減少したが, エタノールによる増強作用は認められなかった. その他の血液学的検査やserum glutamate oxaloacetate transaminase (SGOT), serum glutamate pyruvate transaminase (SGPT) の測定値にいずれの投与群においても, 対照群との間に有意差は認められなかった. 肝ミクロゾーム分画中シトクロームP450量はすべての投与群において増加傾向を示したが, 対照群との間に有意差は認められなかった. 一方, 肝可溶性分画のグルタチオンS-トランスフェラーゼ活性は対照群と比較し, いずれの投与群においても有意な上昇を認めた. 今回のラットを用いた実験からは, エタノールがベンゼン作用を修飾する有意な結果は得られなかった.
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© 1999 産業医科大学
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