抄録
1999年夏, 日勤帯の鉄鋼業高炉前の暑熱作業に従事する8人の熟練労働者を対象に, 4通り(原液, 2倍, 3倍, 5倍)に希釈し氷で冷やした市販の飲料水(Na+ 21mEq/ℓ, K+ 5mEq/ℓ, 糖質6.7g/dl)を自由に摂取させた. 通常の食事を摂取させ, 希釈率は労働者には知らせなかった. 午前中に24例中20例で1,5%以上の脱水を来たしたが, 異常な自覚症状は認めなかった. 全体平均では, 体温は0.34℃上昇し, 体重は1.77kg低下し, 飲料は1,875g摂取され, 水の損失は3,732gに達した. 午前中の体重変化は2倍と3倍の時に有意に少なかった. 尿中Na+農度は低下し, K+濃度は有意に上昇した. 希釈率の違いによって, 体温, 体重, 飲水量, 蒸泄量に有意差は認めなかった. 蓄尿中のNa+総排泄量は, 3倍希釈のときに最も多かった. 飲料の飲みやすさでは, 2倍希釈が最もよい結果となり原液は全員が濃すぎると判定した. 5倍希釈を推奨する結果は認めなかった.