抄録
職場のメンタルヘルスと自己表現スキルの関係を調べる準備調査として, 自己表現スキルの1つであるアサーティブネスを測定するRathus Assertiveness Schedule (RAS)の日本語版を作成し信頼性・妥当性を検討した. 対象は, 某製造業A社の従業員364名とアサーティブネストレーニング(AT)を受講した社会人173名とした. 方法は, AT受講者が受講前に回答した結果とATのトレーナーが客観的に受講者の自己表現を評価した結果を比較し, 日本語版RASの妥当性を検討した. また, A社従業員の回答結果から内部一貫信頼性を調べた. 次に, 同意を得られたA社社員98名に対して再度調査を行い, 再テストの信頼性を調査した. 調査結果から, 30項目全てよりも3-7, 9, 13, 19, 20, 25, 28を除く19項日の日本語版RASの方が, トレーナーの客観的評価と相関が高く, 妥当性が高いと思われた. また, クロンバッハのα係数や, 初回と2回目の結果の相関も共に0.80以上と高く, 30項目及び19項目の日本語版RASの内部一貫信頼性と再テストの信頼性は高いと考えられた. 今回の結果から, 日本人のアサーティブネスを測定するには30項目全てよりも19項目の日本語版RASの方が好ましいと考えられた.