抄録
「擬似科学」や「擬似医療」に関わる人々がいる. それぞれの分野の専門家からすれば, そうした知識は「誤った知識」であり, そうした「誤った知識」を信じている人は「無知」ないし「非合理」と評価される. 彼らは「無知」や「非合理」なのだろうか. 本稿の目的は, 「誤った知識」=「非正統的知識」への関与のあり方を, 関与者の視点, 「正統的知識」, そして「非正統的知識」の特性という三者間の関係から説明することにある. すなわち, 関与者はおのおのの知識の特性との関係の中で, 「非正統的知識」へと方向づけられていることを分析していく. また, 「非正統的知識」への関与ということには, 社会の構造的ないし制度的な問題が関わっており, とくに「素人(普通の人々)」と「専門家」をつなぐ適切な制度について考える必要があることを示唆する.