抄録
浴槽の大型化に伴い省資源(節水)を目的に循環式浴槽システムが普及している. 最近, 宮崎県と鹿児島県で入浴施設を感染源とするレジオネラ症集団発生が相次いで起こり, 現時点で疑いを含め合計300名を超す感染者と8名の死亡者がでている. 平成13年9月に厚生労働省が発行した「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」が遵守されていない現状が明らかになった. 福利厚生のための入浴施設における労働者のレジオネラ症発生を防止するためには産業保健業務従事者がこのマニュアルをよく理解し遵守することが大切である. 本稿ではマニュアルを理解するために必須な微生物学の知識を産業保健業務従事者を対象に解説する. 日本における入浴施設を感染源とするレジオネラ症の発生状況とその社会背景, レジオネラの細菌学的性状, 環境中での棲息状況と生態, レジオネラ症の臨床像, DNA解析による感染源の同定法について述べる. さらに実際の作業レベルでの効果的なレジオネラ除菌対策についても概説する.