抄録
2001年9月, 産業医科大学病院新生児集中治療室(NICU)において, 入院患者に色素産生性Serratia marcescensの集団保菌(感染症は未発症)が疑われ, 産業医科大学病院ICG(Infection Control Group)委員会はこの原因の究明と対策を行った. 病棟内の環境調査と職員の手指細菌検査の結果, 当該事例は, 患者の臀部清拭用消毒綿と, それを保管した湿布缶が汚染源であり, これが職員の手指を介し患者間に伝播した事が原因と特定できた. 対策として, 1. 湿布缶の廃止, 患者ごとの専用消毒綿の設置, 2. 入院患者の監視培養, 3. 定期的環境調査の実施, 4. 手洗いおよび手指消毒の徹底, 5. 1処置1手袋への変更, 6. 看護手順の積極的見直しなどを行い, 翌年1月に集団保菌を終息し得た. ICG委員会と病棟職員などによる迅速な原因究明と徹底した対策という相互の連携により, 感染症発症者を出すことなく終息させることができた1例として報告する.