2004 年 26 巻 1 号 p. 85-97
ヘパリン結合性EGF様増殖因子(HB-EGF)はEGFファミリーに属する増殖因子で, 創傷治癒や心臓肥大など多くの生理的, 病理的過程に関与している. HB-EGFはEGF同様, 膜蛋白質として産生され細胞表面でプロテアーゼにより切断, 遊離(ectodomain sheddingと呼ばれる. 以下sheddingと略す. )されて増殖活性を有するようになる. HB-EGFのsheddingはG蛋白質共役型受容体(GPCR)のリガンドやストレスあるいは炎症性サイトカインの刺激により誘発される. 刺激によるHB-EGFの活性化は, ホルボールエステル(TPA)ではプロテインキナーゼCが, リゾホスファチジン酸(LPA)では古典的MAPKカスケードと低分子量GTP結合蛋白質Rac1が, またストレスや炎症性サイトカインではP38 MAPKが関与している. 生体内環境に制御されたHB-EGF活性化の分子機構が明らかになりつつある.