抄録
職業性ベンゼン曝露の生物学的モニタリング法として尿中trans, trans-muconic acid(t, t-MA)を測定する簡易手法について検討を行った. ベンゼン取り扱い作業場において延べ74名(非喫煙者29名, 喫煙者45名)の男性を対象とした. ベンゼン曝露濃度は, 有機ガスモニターを用いGC/FIDで分析した. 尿中t, t-MA濃度は, 尿を固相抽出カラムにより前処理し, HPLCで分析した. その結果, 曝露濃度(X:ppm)と尿中t, t-MA濃度(Y:mg/g・クレアチニン)との間には, Y=0.948X+0.586(r=0.798:非喫煙者), Y=0.885X+0.894(r=0.871:喫煙者)の関係が得られた(P<0.01). これらから, 1ppm曝露における尿中t, t-MA濃度は, それぞれ1.5および1.8(mg/g・クレアチニン)と推定された. これらは, これまで報告されたものと同程度であり, ベンゼン曝露の簡易モニタリング法としての有要性が認められた.