Journal of UOEH
Online ISSN : 2187-2864
Print ISSN : 0387-821X
ISSN-L : 0387-821X
炎症性メディエーターによるマウスアストロサイトのNa+依存性グルタミン酸トランスポーターの制御
岡田 和将山下 優毅辻 貞俊
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 27 巻 2 号 p. 161-170

詳細
抄録

アストロサイトはNa+依存性グルタミン酸トランスポーターを介して中枢神経系における細胞外グルタミン酸濃度を安全域に維持することが示唆されているが, このNa+依存性グルタミン酸トランスポーターは筋萎縮性側索硬化症(ALS)やアルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患の病態機序にも関与することが報告されている. この研究ではマウス由来初代培養アストロサイトのNa+依存性グルタミン酸トランスポーターによるグルタミン酸の取り込みに対するprostaglandin(PG)E2, interleukin(IL)-1βおよびIL-6の作用を解析した. アストロサイトをPGE2, IL-1βおよびIL-6で24時間刺激し, L-[3H]グルタミン酸の取り込みを測定した. PGE2は用量依存性にグルタミン酸の取り込みを増加させたが, IL-1βおよびIL-6は単独ではグルタミン酸の取り込みを変化させなかった. 一方IL-1βはPGE2によるグルタミン酸の取り込みの増加を促進し, IL-6はPGE2によるグルタミン酸の取り込みの増加を抑制した. グルタミン酸取り込みの動態解析ではPGE2およびPGE2+IL-1βはNa+依存性グルタミン酸トランスポーターのVmax値を増加したがKm値は変化させなかった. IL-6はPGE2によるVmax値の増加を抑制した. これらの結果からPGE2, IL-1β, IL-6の炎症性メディエーターはアストロサイトのNa+依存性グルタミン酸トランスポーターの機能を変化させALSやADなどの神経変性疾患の病態機序において重要な役割を果たしている可能性が推測される.

著者関連情報
© 2005 産業医科大学
前の記事 次の記事
feedback
Top