2007 年 29 巻 1 号 p. 1-26
本研究の目的は, 単純繰り返し作業において作業者の能力と作業の時間的制約のバランスが作業者におよぼす影響を明らかにすることである. 本研究では, 同一のパターン認識課題について制限時間の設定が異なる三条件を用意した(各被験者の能力に合わせた制限時間, 被験者全員一律の比較的厳しい制限時間, 被験者全員一律の比較的緩い制限時間). これら三条件について, 作業パフォーマンス, 主観的指標, 生理的指標(脳波, 心電図)の比較を行った. その結果, 能力の異なる作業者に対して一律の制限時間を課す場合には, 作業パフォーマンスと作業者の心理的影響における個人差が大きいことが示された. 一方, 作業者に対して一律の制限時間を課す場合でも十分な余裕を設ければ, タイムプレッシャーによる悪影響が小さいことが示された. また, 脳波についての検討から時間的制約の課し方により作業への注意集中の時間的変化のパターンが異なることが示された.