Journal of UOEH
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音高知覚の線形変換モデルの検討
吉岡 真
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1981 年 3 巻 1 号 p. 35-44

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抄録
中枢の音高処理が線形変換で表わされる音高知覚モデルは, 扱い易く, 定性的な面で多くの音高知覚現象を説明しているが, 定量的な面からの検討が充分なされていない. 本論文では, 定量的な音高実験データと線形変換を用いた音高知覚モデルの予測値とを比較することにより, この種のモデルの有効性について検討を加える. 末梢の変換も線形変換からなる音高モデルでは, 非調和性複合音による音高シフト現象を定量的に予測することはできない. 末梢の変換に結合音を生み出すような非線形性を持たせると, モデルの予測値は実験値と良い一致を示すようになる. 線形モデルの予測音高パターンは, 音高マッチングヒストグラムの実験データに見られるような多モード性の予測に乏しい. この点, Goldsteinのモデルに代表されるような非線形モデルの方がすぐれている. したがって, 音高知覚のモデルとしては, 末梢の変換も中枢の変換も非線形なものが適当であると思われる.
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© 1981 産業医科大学
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