Journal of UOEH
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バイオエシックス
―倫理決定の基盤―
Chandler McC. BROOKS
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1981 年 3 巻 4 号 p. 469-480

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抄録
人間は一種の動物であり, かつ理性をもった存在である. 生命の倫理はこの二つの側面をもっている. 生物の目的は生存であり, 生存のための条件を満たすことが生物学的な善である. 種の生存のための共同生活の総和として生物界は生態学的なバランスを保っているが, これを破壊する人間の行動は悪である. 生物学的倫理をコントロールするのは理性的倫理である. 常に未来に理想をもつ人間は, 神と人間理性の両者をよりどころとして善悪の観念を発展させてきたが, 現代ではその基準が混乱し, 様々な矛眉を生んでいる. 科学者はもはや常に真理の探究に止まらず, 科学の倫理を追求しなくてはならない. 医師の戒律は古来からいろいろあるが, 現代は昔の理想を忘れて医の倫理を法制化して事足れりとする傾向がある. 人類の最大幸福につながる生命の倫理を確立するためには, その前提として, 個人の責任にもとづいた思想・研究の自由が保障されるべきである.
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© 1981 産業医科大学
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