抄録
佐賀県の10ヶ所のクリークから採取した表層水を10μg/mlストレプトマイシンを含むR2A培地に接種して, ストレプトマイシン耐性菌の探索を行った. 16S rRNA遺伝子解析により, ストレプトマイシン耐性を持つ菌はBacillus, Novosphigomium, Sphingopyxis, Oceanobacillus属に高い相同性を有することが明らかになった. また単離菌の60%がカップ法において700μg/mlのストレプトマイシン溶液を投与しても阻止円を形成しなかった. ここで得られた単離菌に対して, マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOF MS)による分類の有効性を検討した. その結果, MALDI-TOF MSは16S rDNAの1, 000bpに対してAluⅠ, Hae Ⅲ, HhaⅠを作用させたRFLP(restriction fragment length polymorphism)より高い識別能を示した. MALDI-TOF MSは, そのハイスループットな能力を考慮すると, MALDI-TOFマススペクトルデータベースの構築によって迅速な微生物の同定手段になる可能性を持つと思われる.