抄録
直腸癌に対する前方切除術開始直後に, ラテックスアレルギーによるアナフィラキシーショックを来した症例を経験した. 症例は72歳, 女性. 直腸癌に対し直腸高位前方切除術を施行した. 執刀開始から約15分後に突然, 気道内圧の上昇, 血圧・動脈酸素飽和度(SpO2)の低下を認め, 同時に全身の紅潮, 喘鳴, 心電図異常が見られた. ラテックスによるアナフィラキシーショックを疑い, 手術を中断, アナフィラキシーショックに対する治療により救命し得た. 術後, ラテックスアレルギーに対する検査を施行したところ, 血中ラテックス特異免疫グロブリンE(IgE)抗体値が高値を示し, ラテックスによるアナフィラキシーショックと診断した. ラテックスフリーの環境で再手術を行い無事に終了した.