抄録
小型甲殻類アルテミアのトレハラーゼ遺伝子の構造解析を行うため, 近交系アルテミア由来のゲノムライブラリーから得られた4つのクローンに基づいてアトレハラーゼ遺伝子を含む49kbの領域を再構築した. この領域内には以前我々が報告したトレハラーゼcDNAに対応する8つのエキソンが存在していた. 他の動物で報告されているトレハラーゼ遺伝子と構造を比較した結果, 動物界を超えて保存されているエキソン/イントロン境界が存在していることが判明した. 5'RACE法によりトレハラーゼmRNAとトレハラーゼ遺伝子の関係を解析し, エキソンIの領域内にこれまで知られていなかったエキソン/イントロン境界が存在することを明らかにした. また, ミトコンドリアのリボソームタンパク質(MRP-S33)遺伝子の一部のコピーがトレハラーゼ遺伝子の5'側の領域に組み込まれていることが判明した. 組み込まれた配列は本来のMRP-S33が持っていたポリA付加シグナルを保持していた. 3'RACE法により, このポリA付加シグナルが依然として機能しており, その結果としてトレハラーゼmRNAの5'UTRとMRP-S33遺伝子の3'末端をもった短いキメラmRNAが転写され得ることが示された.