抄録
乳腺紡錘細胞癌は, 紡錘形の肉腫様の癌細胞からなる乳癌の特殊型で稀な疾患であるので, 今回経験した乳腺紡錘細胞癌の3切除例を文献的考察を加えて報告する. 症例はすべて女性. 年齢は26, 52, 58歳であった. 最大腫瘍径は, それぞれ3.5, 3.5, 9.0cmであった. 手術は3例とも, 胸筋温存乳房切除術を施行した. 3例中2例に内部の壊死を伴う嚢胞性病変を認めた. 3例中1例に腋窩リンパ節転移を認めた. 3例ともに, エストロゲンレセプター(ER)陰性, プロゲステロンレセプター(PgR)陰性であった. 3例とも, 異型性の強い紡錘形細胞あるいは多稜形細胞が充実性肉腫様に浸潤増殖している所見が認められ, 一部に明らかな上皮性性格を有する明瞭な癌胞巣の存在が確認された. 以上より, 紡錘細胞癌と診断された. 予後は, 1例において術後2年目に肺転移, 骨転移, 脳転移を認め死亡したが, 他の2例は, 術後5年以上の再発の所見なく生存中である.