2011 年 33 巻 2 号 p. 157-161
気管支異物は小児や高齢者に好発し, 慢性咳嗽や反復する肺炎を惹起するのみならず, 時に致死的な状態になりえる. 2006年から2010年までの5年間において, 当科で経験した気管支異物の摘出症例の6例を対象として, その臨床像について検討した. 男性4例, 女性2例, 年齢の分布は8歳から83歳であった. 異物の嵌頓部位は, 全例右気管支であった. 6例中5例で無気肺や肺炎を併発していた. 異物の種類は, 歯や義歯が5例ともっとも多く, 1例が魚骨であった. 4例が局所麻酔下の軟性気管支鏡下に摘出可能であった. 小児の症例においては, ラリンジアルマスクを使用した全身麻酔下に, 軟性気管支鏡を用いて摘出した. 1例は開胸術にて気管支を切開し異物摘出したのち, 気管支形成術を行った. 気管支異物は, 軽微な症状のみで, 問診では診断に至らないこともありえるが, 長期の介在により, 異物の周囲肉芽増生を伴い摘出に困難を要するため, 早期の診断と摘出が必要である.