抄録
ナノ粒子は, 直径が1〜100nmの粒子と定義される. 近年, ナノ粒子の生産量の増加と共に有害性に対する関心が高まり, 多くの評価が進められている. ナノ粒子の生体影響評価は培養細胞を用いたin vitro試験と, 動物を用いたin vivo試験の双方において研究が進められ成果が得られつつあるが, in vitroとin vivoでは実験系が大きく異なり, その結果の解釈に乖離がある場合がある. In vitroによるナノ粒子の評価では, ナノ粒子の細胞毒性に寄与する因子として, 粒子の溶解性や吸着性, 表面活性などが指摘されている. 一方, in vivoにおけるナノ粒子の吸入による肺影響では, 粒子の滞留性が重要であり難溶性の粒子で持続的な炎症の誘導が見られることがある. ナノ粒子の有害性評価においては, in vivo, in vitro双方の特長を理解し総合的な試験を実施することで, 作用機序を含めた生体影響の正確な評価が可能となる.