Journal of UOEH
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側頭葉てんかんに関する認知機能研究の進歩-社会的認知機能を中心に-
山野 光彦赤松 直樹辻 貞俊
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2012 年 34 巻 3 号 p. 245-258

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抄録

側頭葉てんかんに関する認知機能研究は,従来,記憶,言語,全般的知能を中心に行われてきた.しかし近年,神経心理学領域では社会的認知機能という概念が提唱され,その代表的なものに表情認知,意思決定がある.社会的認知機能は,我々が社会生活を送る上で必要不可欠な,より高次の認知機能の総称であり,神経機構には扁桃体を中心とした情動の働きが重要視されている.我々は側頭葉てんかん患者を対象に社会的認知機能(意思決定)に関する研究を行い,その機能低下の存在と,右側の扁桃体・海馬複合体が重要な役割を果たすことを明らかにした.てんかん患者に最善の医療を提供するためには,正確な診断や適切な治療に加え,社会的認知機能というアプローチから,より円滑に社会生活を送るための支援を行う必要がある.今後,この分野の研究の発展が,てんかん患者に対するトータル・マネージメントとしての医療提供に貢献することが期待される.

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© 2012 産業医科大学
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