Journal of UOEH
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[症例報告]
就労中の頭蓋内血管狭窄患者に対する保存的治療における盲点
青山 雄一 大田 信介榊 三郎西澤 茂
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2014 年 36 巻 1 号 p. 33-39

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抄録
症例は59歳の男性,脳梗塞初発時に左中大脳動脈(MCA)高度狭窄と脳血液循環障害が疑われ,血行再建術の適応が考慮された.しかし患者本人の社会的要因もあり,保存的加療にて経過観察を行った.その後,患者の退職直後に左MCA領域の広範な脳梗塞を再発,血圧低下,高度な貧血と緊急内視鏡にて活動性の出血性胃潰瘍を認めた.MRIでは新たな血管病変や脳塞栓を疑う所見は認めず,高度な貧血と血圧低下による循環動態障害が一因となって脳梗塞を再発したと判断した.胃潰瘍は過去に既往がなく,H. pylori菌抗体も陰性であったため,就業面での環境変化が原因のストレス性胃潰瘍と推測した.産業衛生の立場では労働環境のストレスが胃潰瘍のリスクであることが知られており,臨床的には見落としがちとなる患者の社会的側面にも配慮が必要と考えられた.
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© 2014 産業医科大学
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