抄録
転倒は,在宅における脳卒中片麻痺者の生活のあらゆる場面でみられるが,その原因の一つとしてつま先離れ(toe clearance)の問題がある.しかし,転倒の原因は一様ではない.今回我々が開発した靴中敷(インソール) 式足圧力モニター装置は,測定場所を選ばず手軽に足圧力分布や足圧力曲線を測定・記録できる.この装置を用いて,20 名の慢性期片麻痺者を対象に,屋内平地歩行時の足圧力分布と足圧力曲線を測定した.さらに,1症例に対して,屋外平地,砂利道,階段昇段や坂道下り歩行時に同様の測定を行った.屋内平地歩行時は,非麻痺側踵部の荷重比が有意に高く,また,麻痺側立脚期割合と10 mの歩行時間の間に負の相関(r = -0.73,P < 0.01)が認められた.屋外歩行では,状況に合わせて非麻痺側の足圧力曲線が変化しており,麻痺側においては遊脚期移行時のつま先の床離れが遅延していた.今回の結果から,屋内平地歩行や屋外歩行時の非麻痺側依存性とtoe clearanceの問題が確認された.