Journal of UOEH
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腎線維化の機序と治療
久間 昭寛 田村 雅仁尾辻 豊
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2016 年 38 巻 1 号 p. 25-34

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抄録
組織線維化は脳を除くほぼ全身の主要な臓器に生じ,線維化を起こした臓器は最終的に機能不全に陥る.腎線維化は急性腎障害の瘢痕形成や慢性腎臓病の進行に関与しており,腎線維化が進むことは腎機能が低下することを意味している.一度生じた線維化は不可逆的で,腎臓に関しては透析導入や腎移植を迫られてしまう.したがって,腎線維化の機序を解明することは非常に重要な研究課題である.線維化の機序として線維芽(筋線維芽)細胞の活性化と増殖や,過剰な細胞外基質産生が線維化を招くことは多くの臓器で共通したことであるが,そこに至るまでの経路には腎臓特有の原因も存在すると考えられている.つまり,腎臓には尿細管細胞,メサンギウム細胞,エリスロポエチン産生細胞といった他臓器には無い細胞が存在し,それらが線維化に関与していることが分かりつつある.腎臓特有の状況や細胞内外の情報伝達系を中心とした線維化には,transforming growth factor-β (TGF-β) によって誘導された上皮間葉移行や,wingless/int (WNT) シグナル,さらには,慢性腎臓病に伴う炎症,腎性貧血や尿毒症による機序が存在しており,それらについて論述する.最後に,腎線維化に関与している分子を標的とした治療法として,抗TGF-β抗体やセリン/スレオニンキナーゼ,mammalian target of rapamycin (mTOR) について述べる.
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© 2016 産業医科大学
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