Journal of UOEH
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悪性気管狭窄に対してExpandable Metallic Stent留置した1例
市来 嘉伸 川崎 淳司吉田 哲郎濱津 隆之末廣 剛敏田中 文啓杉町 圭蔵
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2016 年 38 巻 1 号 p. 71-76

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抄録
近年,手術適応外の中枢気道狭窄症例に対して,気道ステント留置の有用性は多く報告されるようになった.今回,高度呼吸困難を伴う悪性腫瘍気管浸潤による気管狭窄に対して,気管ステント留置術を行った症例を経験したので報告する.症例,90歳女性.201X年2月より尿路感染症の治療中であったが,経過中に呼吸困難が出現した.CT上気管右側上縦隔に気管狭窄を来す腫瘤を認めたため,当科に紹介となった.著明な呼吸困難のため,noninvasive positive pressure ventilation(NPPV)管理とした.気管支鏡にて,声帯より約2.5 cm末梢の気管に直接浸潤による高度狭窄を認めたため,expandable metallic stent(EMS), proximal typeを留置した.留置後,気管狭窄部のpatencyは改善し,NPPVも離脱できた.酸素投与も中止となり,端坐位保持や自立した食事摂取も可能となった.気管ステント留置8日後,突然血圧低下.心エコーにて左室心基部の過剰収縮と冠動脈1枝病変では説明できない心尖部の無収縮を認め,たこつぼ型心筋症と診断された.保存的に経過観察していたが,心機能増悪し,EMS留置後11日目永眠となった.悪性腫瘍気管浸潤に対する気管狭窄に対して,EMS留置は有効な手段と考えられた.また,気道狭窄症状やストレスの強い症例では,たこつぼ型心筋症発症のリスク軽減のため,できるだけ早い段階で気道ステントなどの気道を確保できるような治療介入することが必要と考えられた.
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© 2016 産業医科大学
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