2016 年 38 巻 4 号 p. 291-296
甲状腺ホルモン不応症(RTH)は,これまで約140種類の甲状腺ホルモン受容体ベータ(TRβ)遺伝子変異が同定されている.今回家族歴は有さないが,繰り返す動悸を契機にRTHの診断に至った中年男性の1例を経験したので報告する.TRβ遺伝子解析の結果,第10エクソン,453番目のプロリンからアラニンへの変異を認めた.RTH はバセドウ病やTSH(thyroid stimulating hormone)産生腫瘍(TSHoma)とは治療法がまったく異なるため,RTHの家族歴を有さなくても,不適切TSH分泌症候群が持続しTSHomaが否定的な場合には,積極的に遺伝子解析を行うことが重要である.