抄録
3人の科学者を含め5人の健康男子が被験者となり高気圧室を利用して4日間4気圧ヘリウム環境にて生活した. この間湿度をほぼ一定(rh=60%)に保ち室温28℃-34℃まで変化させ, 各室温にて定常状態を保たせて分割熱測定法により, 安静時の生体の熱出納を測定した. 基礎代謝量は4気圧にて約10%増加したが安静時産熱量は一気圧空気中のそれと差がなかった. 高気圧環境では体熱放散様式のうち対流によるものが著しく増加し反面蒸発および輻射性放散が減少した. 一定室温で比較すると高気圧では皮膚温は有意に低下したが深部体温(直腸温)の低下はわずかであった. また高気圧環境では皮膚血流量が低下し中核から被殼への体温の移動が妨げられていることが判明した. 4気圧ヘリウム環境では安静時の快適温度は32℃附近であった. 高気圧で一時的に尿量増加をみたが, 尿量は気圧依存性ではなくむしろ平均皮膚温との間に高い相関があることが見出された.