抄録
本論文は日本における産業医活動, 特に嘱託産業医活動の特徴を紹介し, 医師会における生涯教育の内容に触れ, 更に将来の産業保健についての提案を行った総説論文である. 我が国における嘱託産業医の組織並びに活動は, 日本医師会のリーダーシップのもとに, 総括地域医療の一端として行われているところに特徴があり, 他のアジア諸国においても参考となる幾つかの側面を有している. 特に最近では県医師会並びに市医師会における生涯教育, 産業保健の地域レベルでの組織には注目すべきものがある. 20年後の社会環境の変化に適応した産業保健については, いわゆるポストインダストリアルソサエティの社会環境に適した体制が必要であり, この為に本論文においては「産業生態科学」という, ある意味での総合科学を提唱し, その研究を基本に産業医学の生涯教育が行われるべきであると述べている.