多くの動物では乳酸脱水素酵素 (LDH) のアイソザイムについての研究は数えきれないほどあるのに比べ, 蚊のLDHの電気泳動像についての報告は今迄数篇しかなく, しかも幼虫期についての研究はさらに少ない. 今般35種類の蚊の4令幼虫について, ポリアクリルアミド平板ゲルによるLDHの電気泳動像を比較したが, 一般に活性が低かったり発現が不安定な種類が多く, 中には全く活性バンドの検出できないものも存在した. 生命現象の維持に重要な役割をもつ酵素であるLDHが蚊の体内に存在しないことや活性が極めて低いことは考え難いことであるので, その原因について検討を進めた. その結果, 蚊幼虫の中腸内にはLDH活性を阻害する成分が含まれていることをつきとめたので, 虫体から消化管を除去した後に酵素標品を調整したところ, 今迄隠されていた強いLDH活性バンドを発現させることに成功した.この研究に用いた蚊の採集の一部については, 1981年度の文部省科学研究費海外学術調査費 (No.56041048) の補助を受けたのでここに明記して感謝する.