Journal of UOEH
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ホスファチジルイノシトールリン酸合成酵素の基質1L-イノシトール1リン酸の調製法
森井 宏幸 西村 壮広竹尾 政宏片山 知郁中井 佳奈
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2018 年 40 巻 3 号 p. 217-224

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抄録

結核菌を含めた病原性抗酸菌に特異的な活性作用機序を持った新薬の開発が求められている.我々は2010年に膜リン脂質のホスファチジルイノシトールの生合成経路がヒトと抗酸菌とで異なる事を発見した.相違点の鍵となる酵素がホスファチジルイノシトールリン酸(PIP)合成酵素である.この酵素は放線菌門の一部の細菌のみに存在し,ヒトやヒトの常在細菌には存在しない.この酵素活性を阻害する化合物を見つけることができれば病原性抗酸菌に特異的な新薬の開発に繋がる.PIP合成酵素活性測定には,基質としてアイソトープでラベルされた1l-イノシトール1リン酸(1l-Ino-1P)が必要である.この基質は市販されていないので,これまでは[14C]グルコース6リン酸([14C]Glc-6P)からメタン生成古細菌の粗酵素を1l-Ino-1P合成酵素として使って調製していた.この粗酵素の活性は低く,粗酵素中の不純物の影響で生成物の1l-Ino-1Pの定量が不正確だった.本研究では,超好熱性古細菌Aeropyrum pernixの1l-Ino-1P合成酵素組換え体溶液を酵素として用いて,1l-Ino-1P調製の最適条件を検討し,1l-Ino-1Pの簡易定量法が正確な濃度を示している事をガスクロマトグラフィーで確認した.また,1d-イノシトール1リン酸(1d-Ino-1P)はPIP合成酵素の基質にならないことを確認した.

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© 2018 産業医科大学
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