2019 年 41 巻 3 号 p. 317-325
アンジオポエチン(angiopoietin)は血管新生,造血系幹細胞の恒常性維持に重要な役割を担っている.アンジオポエチン様因子(angiopoietin-like proteins : ANGPTLs)は,アンジオポエチンに構造上類似するタンパクとして同定され,現在までに8種類報告されている.ANGPTLsは分泌タンパクであり,血管新生以外に糖代謝,脂質代謝,レドックス制御,慢性炎症などにも関与する.近年,慢性炎症が発がん,がん浸潤・転移の重要な因子の一つであることが報告され注目されている.ANGPTL2,3,4,6,7は炎症を促進させ,がん進展に関与する.一方,ANGPTL1は腫瘍血管新生を抑制することで,がん進展を抑制する.本総説では,がん進展におけるANGPTLsの機能を概説し,ANGPTLsを標的としたがん浸潤・転移抑制法開発の可能性についても紹介したい.