2021 年 43 巻 1 号 p. 103-115
症例1は77歳,男性で,ECOG PS 0であった.近医にて糖尿病で治療中に血糖コントロール不良となり,腹部CT施行,S状結腸の壁肥厚を指摘,2020年3月当院に紹介された.精査の結果,S状結腸癌の診断に加え,前立腺癌とそれに伴う転移性骨腫瘍の診断となった.4月,腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.現在,術後6ヵ月であるが,前立腺癌とそれに伴う転移性骨腫瘍に対するホルモン療法中で,病勢コントロール良好である.症例2は86歳,男性で,ECOG PS 3であった.2020年8月発熱,腹痛を主訴に当院に救急搬送された.精査の結果,盲腸癌とそれに伴う閉塞性急性虫垂炎の診断に加え,前立腺癌とそれに伴う転移性骨腫瘍の診断となった.同月,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.術後,誤嚥性肺炎を繰り返し,43日目に永眠された.わずか5ヵ月間に大腸癌と前立腺癌の同時性重複癌症例を経験し,大腸癌における治療戦略として,近年増加の一途を辿っている前立腺癌との重複癌に関して,疫学的な考察も含め報告する.