Journal of UOEH
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悪性黒色腫に対するニボルマブ投与後に破壊性甲状腺炎とACTH単独欠損症を来した1例
西尾 公佑 岡田 洋右黒住 旭田中 良哉
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2021 年 43 巻 1 号 p. 97-102

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抄録

症例は34歳女性.X-8年に慢性甲状腺炎と診断されたが,甲状腺機能は正常で経過した.X-9年悪性黒色腫の診断で外科切除および化学療法を施行した.X-1年11月左肺および左主気管支に転移を認め,遠隔転移を伴う根治的切除不能な症例に対して抗PD-1抗体であるニボルマブを投与された.X-1年12月ニボルマブによる無痛性甲状腺炎後の甲状腺機能低下症に対してレボチロキシンNaが開始となった.X年3月に効果不十分でありニボルマブは中止となったが,4月食欲不振,発熱,全身倦怠感を認め,血液検査にてcortisol 5.0,ACTH 17.5と低値を認め副腎不全と診断し入院した.ハイドロコートン投与により速やかに症状は改善し,頭部MRI検査で器質的病変なく,負荷試験ではCRH試験でACTH・コルチゾール共に低反応を認め,ニボルマブによるACTH単独欠損症と診断した.ヒドロコルチゾン15 mg内服で退院となった.ニボルマブによる甲状腺機能障害の副作用は国内で14.3%,海外で5.9%と高頻度に認める.しかし,続発性副腎皮質機能低下症に関しては海外臨床試験で0.3%程度の頻度で,甲状腺機能障害との合併発症の既報は少なく,比較的稀な症例と考えられたため報告する.

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