Journal of UOEH
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ケア場面での高齢者の羞恥の強さの違い-周囲の人の有無による比較-
辻 慶子 児玉 裕美笹木 葉子内田 真優美下條 三和松本 真希岩田 直美
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2021 年 43 巻 2 号 p. 283-291

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抄録

高齢者の尊厳を守ることは,高齢者のケアを行う上で不可欠なことである.高齢者がケア場面のどのような状況で羞恥を感じるかを把握するために調査を行った.調査内容は,病院内で看護師や患者が日常的に遭遇する場面を表現したイラスト計12枚を使用した.イラストは著者らが独自に作成した.対象は,A県の老人福祉施設4施設を利用する60歳以上の高齢者を対象とした.要介護度3以下で,かつ認知症のない43名に対して調査を行い,有効回答は41名であった.その結果,1.高齢者は,周囲に人がいる場合では,おなじ処置や動作でも羞恥を強く感じる.2.高齢者は,移動する際,松葉杖を使う場合よりも車いすで援助を受ける方が羞恥を強く感じる.3.清拭では,周囲に人がいる場合でもそれほど羞恥が強まらなかった.4.家族の面会において,男性は周囲に人がいる場合で羞恥が高くなった.これらのことより,高齢者は,医療者以外の人に処置や動作を見られることに羞恥が高いということが考えられた.また,車いすで移動することは,身体的な衰えを他者に見られるので羞恥が高くなると考える.男性は性別役割が弱くなるような場面を人に見られることで羞恥が高くなるのではないかと推測された.高齢者の日常的に遭遇する場面における羞恥心は,性差や医療従事者以外の人の有無により相違があることが明らかになった.

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© 2021 産業医科大学
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