抄録
高度開発地域での金属による環境汚染を探る基礎資料を得る目的のため, 北九州市八幡西区とその周辺地域の着生蘚苔類の体内金属量を, コモチイトゴケ1種および群落全体について測定した. Fe, Zn, Mn, Cr, Pb, Ni, Cu, Cdの量は工業の中心地域から遠ざかる程減少する傾向を示したが, Ca, Mgは地域的な差が見られなかった. Fe, Mn, Cr, Pb, Ni, Cu, Cdの蘚苔類体内の含有量の比率は, 大気中の比率とほぼ一致した. コモチイトゴケ1種, 蘚苔類群落全体について, 大気の金属汚染の生物指標となることが示唆された.