抄録
粟粒結核で死亡した79才男性の剖検例を呈示し, 結核の診断における困難さをのべ, 本例における関質性腎炎と化学療法や粟粒結核との関連性, また, 類白血病反応と粟粒結核との関連性などについて考察した. 本例においては, 生前には結核の診断はなされず, 改めて結核の診断の困難さを教え, 原因不明の発熱に対して, 常に本症を忘れてはならないことを教えている. また, 1974年から1981年の8年間における日本病理剖検輯報に記載されている結核を抽出した. この間に施行された235,095例の剖検例中に3,242例の結核が見つかり, 全剖検例中に占める割合は1.4%であった. このうち粟粒結核は618例であった. 結核は抗結核剤の出現により著しく減少したが, 最近は余り減る傾向を示さず, 忘れてはならない重要な感染症の一つである.