抄録
人類はかなりの長期間に亘り深度数百メートルの高気圧環境での生存が可能であることが証明されている. このような環境では気圧そのものによる影響とガス組成が1気圧とは異なることによる物理的な因子が生体に種々な生理的な変化をもたらす. 神経系統への影響(高圧神経症候群HPNS)と, 体液バランスへの影響が生理的には大きな変化であるといえる. 前者についてはガス組成を改良することにより問題はほとんど解決することが可能であるが, 後者については人類にとって全く新しい生理的な経験であるといえる. 特に体液の分布のシフトが1気圧における正常なリズムとは異なることが見つかっている. これは尿量やその他体液量をコントロールする因子に反映される. ここでは特に体液をコントロールする因子のうち高気圧環境における腎機能の変化について概説し, その機序を解説するために現在まで蓄積された知識を用いて考察を加える.