Journal of UOEH
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ラットにおける金製剤による腎障害性
―分析電顕による形態学的検討を中心として―
海津 嘉蔵松野 康二児玉 泰江藤 澄哉
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1986 年 8 巻 1 号 p. 27-33

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抄録
本研究は, 金製剤による腎障害性の発症機序を明らかにする目的で行った. 25mgの金チオリンゴ酸ナトリウムをSDラットに1回腹腔内投与し, 6時間後(1群), 24時間後(2群), 72時間後(3群), 144時間後(4群)に採血し, 臓器を摘出した. 1群ですでに強い急性腎不全が惹起された. 血清中金濃度は1群で最高値を示し, 以後,経時的に急速に低下した. これに対し, 各臓器中の金濃度の経時的変化は少なかった. 臓器別では, 腎に最も多量の金が蓄積した. 組織学的検索では, 光顕的にみると最も顕著な変化は近位尿細管の直部の壊死像で, 1群ですでに出現し, 以後, 増強した. 電顕的には近位尿細管細胞内のlysosomeの増加があり, その中に多数のelectron dense particleとしてみられる金が分析電顕で確認された. 以上の事から, 腎は金の重要な標的臓器で, 金は腎にnephrotoxinとして作用し, その沈着により急性尿細管壊死が惹起される事が明らかになった.
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© 1986 産業医科大学
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