抄録
薄層クロマトグラフィーによって分離した二重標識リン脂質の放射能をシリカゲルに吸着したまま液体シンチレーション法で測定すると, 高エネルギー核種のカウントが低エネルギー核種のチャネルに大きく混入し, 著しい誤差の原因になる. しかも, この混入はクエンチング検出補正用の外部線源比には現われないので問題がある. 水を加えた界面活性剤入り液体シンチレーターによってシリカゲル粉末から脂質を完全に溶出すればこの問題は解決するが, 使用する市販シリカゲル薄層プレートの種類によって溶出に要する時間が非常に異っていた.分離能のよい “硬い” プレートでは溶出に3日を要した. 一方, “柔らかい” プレートでは1-2時間で溶出したが, ある種のリン脂質は異常な挙動を示すので, 使用に注意を要する. クエンチングの程度の異なる多数の試料のひとつひとつについて両核種の補正されたカウントを求める方法を示した.