Journal of UOEH
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自己破壊の中の平安
―武田泰淳の黙示録―
中野 信子
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1987 年 9 巻 4 号 p. 435-445

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抄録
長年にわたり, 英文学圏において小説の中に表現されたイエス・キリストのイメージを追い続けてきたが, 一番卑近な所に位置する日本文学の中に, 外国文学のそれとは異質な, 日本的風土に根ざしたいろいろなキリスト教が在るという事実を無視できないように思う. 一人の作家の中でキリスト教と仏教とが, 融合と闘争を繰返し乍ら, 独特の世界を創造していった典型として, 武田泰淳を選んでみた. 一方, 黙示録の7つのアジア教会への伝言は, 泰淳の深い, 重苦しい人間理解を説明する一つの契機を与えてくれるように思う. なぜなら, そのメッセージは, 人間というものが未生前から自己破壊というとり返しのつかない運命を負っていることを暗示しているからである. 以下は, 泰淳における実存の重みに関する一考察である.
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© 1987 産業医科大学
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